50年前のカメラって?
今回の世界一周の旅に連れて行った私の相棒。
<PENTAX SL>
発売・製造 : 1968年
製造・販売元 : 旭光学工業
全機械式のフルマニュアル一眼レフ
つまり、
電気を全く使わないフィルムカメラです。
初めてこのカメラを手に取ったとき あまりのカッコよさに心臓が飛び出しそうでした。
どっしりとした重み、
限りなくシンプルなデザイン、
心臓を震わせるような痛快なシャッター音、
例えるなら、
蒸気機関車のような 大迫力のカッコよさと
iPhoneのように 洗練されたスタイリッシュさを
1台のカメラに凝縮した感じ。
もう、本当に好き。
カメラを握る楽しさ、
写真を撮るワクワクを、
いつだって思い出させてくれる 私の宝物です。
大切なカメラ
私に写真の世界やカメラの素晴らしさ、
そして、
誰がなんと言おうと
好きなものをとことん愛していい、
そんな人はキラキラしていると
教えてくれた素敵な人たちがいます。
そんな人たちと縁があって、 プレゼントしてもらったカメラです。
また、偶然に、
このカメラが生まれて今年で50年。
父と同い年になります。
多少調子が悪くたって、 父さんも最近、“腰が痛い”とか言ってるよな
なんて思いながらシャッターを切ります。
おじいちゃんが、
私の父が生まれたときに
嬉しくて買ったというPENTAX SPとそっくりです。
(右がSP、左がSL)
前置きが長くなり、すみません。
とにかく、想いのこもった
大切なカメラということです!!
カメラマンとして
しかし、ここで問題が発生します。
今回の旅の私のミッションは、
世界中の写真を撮り、 それをリアルタイムで日本に届けることです。
いくら好きでも、 50年前のカメラ、SLでは
船の中から、フィルムを現像し、 データ化して、ホームページに載せる!
なんてことはできません。
しかし、私は仕事で使えないカメラを 持って行くことにしました。
それは正解でした。
写真を撮る心を豊かに保つことができたのは
このカメラがあったからでした。
苦しいときに
写真を撮ることが苦しくなるなんて 想像すらしていませんでした。
毎日、1000枚近くの写真を撮って撮って撮りまくる…
気がついたときには、
カメラを置いて出かけたいな…
そんな気持ちの自分がいました。
PENTAX SLに助けられたのは そんなときでした。
このカメラを握っているときだけは、
仕事が一切関係ありません。
ただの“写真を撮るのが好きな人”になれる
魔法のような時間でした。
そうして撮る写真は、 どんなときにも自分を救い出してくれました。
ワクワクする気持ち、
解き放たれるような感覚…
また、写真が撮りたくて仕方がない、 ひとりのバカにリセットしてくれるのでした。
フィルムカメラ世界一周!!
“お前、いつになったら写真を見せるんだ!!”
そんな声が聞こえてきそうです。 すみません。見せます。
さあ、50年の時を超えて、
フィルムカメラ世界一周の旅に出発です!!
これです。これなんです。
味わい深い色味。
ふわっとした質感。
漂う懐かしさ。
そして、
どこか幻想的な雰囲気。
デジタルにはない美しさがある…
いい。
あのギラギラした マリーナベイサンズさえも いぶし銀を放つ…
スエズ運河から。
砂漠にのぼる朝陽。
暗闇に包まれ凍えるような一面の砂漠に、
太陽ひとつ。
世界は変わる。
私は見つけた。
朝がくる幸せ。
ギリシアのサントリーニ島。
この淡い青、
このふんわりとした白、
もしかして、 青と白の島サントリーニ島は
フィルムカメラの真骨頂なのではないか。
音が聞こえそうで
吸い込まれそうな
フィルムの写真。
空と海からやさしく手のひらに
すくいとったような青…
絵を描くように写真を撮りたい。
観光地でフィルムカメラを構える人なんて、
もうひとりも見かけなかった。
そんな時代だから、
歳を重ねたカメラマンが
私の方を見て、にっこり微笑んだ。
同じくギリシャのアテネ。
“30分だけ、フィルムタイムだ!”
こんな遊び心が、
カメラを握る喜びを思い出させてくれた。
“人”と“景色”を
やんわりと馴染ませてくれる
フィルム写真の魅力。
子どもたちはいつも私に聞く。
“どうして写真を撮っているの?”って。
カメラマンだからじゃ、
こたえになっていないよね。
イタリアのカリアリ。
石段に座って、 フィルムをぐるぐる巻き取っていたら、
おじちゃんが通りかかり、 “うわっ、SP…?”と驚く。
カメラひとつで、 話が止まらない。
帰り際、
“懐かしい思い出が よみがえったありがとう…”
って。嬉しかった。
魔女の宅急便の世界。
ノルウェーのベルゲン。
PENTAX SLは 北欧までやってきました。
ノルウェーの森
1枚1枚、 カチャカチャやるから
とっても心に残る。
ソグネ・フィヨルド。
この水面のピンと張った感じや、
しなやかさ、澄んだ空気の感じは、
デジタルでは捉えられなかったかも…
妹はずっと、 ここに来るのが夢と言ってた。
私は、朝起きたら、そこに来ていた。
“彼女がこの景色を見たら何を感じるだろう”
朝の澄んだ心で考えていたら、
涙が溢れていた。
羊の群れが崖を降りて、水を飲みに来た。
あまりにメルヘンで思わず、吹き出してしまった。
ニューヨークはタイムズスクエア。
三脚を立て、何度もファインダーを覗き、
1秒間のスローシャッターを切った。
カッ..シャン…
なぜか嬉しくて、 ガッツポーズをしていた。
おわりに
さて、フィルムカメラ世界一周の旅は いかがだったでしょうか。
フィルムのあたたかさ、
写真を撮る楽しさ、
旅をすることの豊かさ、
何か少しでも感じることがあったなら、
私はとっても嬉しいです。
写真は楽しいです。
きっと、あなたの人生を、 毎日を、もっともっと豊かにしてくれます。
ありふれた日常に、
遊び心とあたたかさを感じたい人がいたら、
はい。フィルムカメラです。
ご愛読、 ありがとうございました。
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