チャリ日本縦断旅
3度の地球一周の旅
子どもたちとの日本一周の船旅
山梨県でのカフェ・ゲストハウスづくり
たくさんのことに挑戦させてもらった。
そして、
ふるさと北海道に戻ってきてからもうすぐ2年が経つ。
有難いことに札幌市のど真ん中に、
こんな僕を拾ってくれた学校があり、
年度的には「3年目の先生」という恐れ多い肩書きがついた。
現在は宇宙からやってきたらしい、
最高にワンダフルで、まるごと未来のかたまりみたいな1年生たちと、
ひとつの海賊船で旅をするような
エキサイティングな日々を過ごしている。
毎日が予想外で、毎日爆笑。
涙をながしたり、激怒したり、
考えて、ぶつかって、また考えて、
やさしさに心ふるえて、
なんだか、あたたかいねって
「きょう」がおわる。
それは「旅」と似ている。
だからなのか、
彼らと見上げる空は
どこまでも清々しくて尊い。
毎日が本気だ。
どれだけ時間があっても足りない。
だって、あの子たちには
夢と未来が溢れてとまらない。
ぼくがどんなに走ったって
到底追いつけないスピードで
走る、走る、走る。
やわらかくて、色鮮やか、
全力でタフネス。
人間らしい喜怒哀楽。
心はどこまでも透明に澄んでいる。
「そのまま、どうかそのまま走ってゆけ」
今の社会にも、今の大人にも
染まらなくっていい。
君たちがつくる「風」は
世界まで吹き抜けて
新しい時代になる。
ぼくは本当に大切なことだけ
大切に伝える。
だから自由に
風になれ。
【変えられるかもしれない」
「今日よりもワクワクする明日の世界をつくりたい」
つまり、世界を変えたい。
ずっと心の真ん中で燃えているぼくの夢だ。
18歳のとき、
隣の部屋の友人が自殺した
彼はピアニストでコントラバス奏者。
深く音楽を愛する美しいアーティストだった。
やりきれなかった、
何もできない自分が嫌になった、
生きづらい世界を憎んだ。
立ち止まると、
息ができなくなりそうで
逃げるように旅に出た。
誰かに勇気を与えたい、
新しい自分を探したい、
そんなのはすべて嘘だ。
ただ、走りたかった。
走らずにはいられなかった。
日本縦断、世界一周。
そんな旅路で
たくさんの「人」と出会った。
そこで出会う人たちは美しかった。
夢があってよく笑った。
悩み、もがき、
素直に泣いた。
よく語り、歌い、踊り、
まっすぐに自分を表現した。
ぼくがいやになった地球の上に、
同じ地球の上に、
こんなに素敵な人たちがいる。
変わるかもしれない、
変えられるかもしれない。
そう思った。
【教育だ】
その頃、訪れたインド。
コーチンという貧しい港町だ。
港に降りた瞬間、
大勢のインドの大人たちがぼくを囲んだ。
「600ルピー!500ルピー!」
ぼくの手をたくさんの人が握った、
そして、そのうちに取っ組み合いの喧嘩が始まった。
誰一人として「ぼく」を見ていなかった。
見ていたのは「お金」だけだった。
ぼくは悲しくなった。
目の前で争う彼らがやりきれなくって
「200ルピー!!」とあり得ない値段を叫んだ。
みんな立ち去った。
ぽつんと残った、
色あせたシャツの男のトゥクトゥクに乗り、
ぼくは町へと向かった。
しかしだ。
港を抜け出しても
息をつく暇なんてなかった。
トゥクトゥクから降りる度に囲まれた。
時計やサングラスを取られ、取り返し、
腕や服を引っ張られては、走って逃げて。
そして、みんなやたらと
楽器を売ろうとしてくる。
ぼくは音楽が好きだから、
なぜだか、楽器だけは買ってしまう。
いつしか行列ができて、
移動しても移動してもみんな追いかけてきた。
「もう、疲れた。」
ぼくはもう、
インドが嫌になった。
そして、
ともに逃げまどい
絆が深まってきた運転手に
「どうして彼らは
あんなにもしつこいのか」と尋ねた。
運転手は道端を掃除をしている女性を指差した。
「1day, 45rupee .」
一日中働いたとしても、
日本円で70円だという。
胸が苦しくなった。
ぼくはあまりにも豊かすぎた、
それが「豊か」だと気づかないほどに。
誰もが、必死だったのだと知った。
きょうを生きるために。
もう何だか、逃げ出したくなったインドで帰り道、子どもたちにあった。
一緒にサッカーをして笑いあった。
インドで唯一の
楽しいひとときだった。
最後に子どもたちが集まってきた。
ぼくは怖かった。
「そうか、どうせまたお金なんだろう、、」
走り去ろうとしたその瞬間、
子どもたちは聞いたことのない言葉をぼくに伝えて、
にこっと笑って手を振ってくれた。
その言葉の意味は
分からなかったけれど、
やさしくて、あたたかかった。
衝撃と自己嫌悪が身体中を走り、
心のまん中に何かが刺さって、
じんわりふるえた。
そして、思った、
「何が違うのだろう。」
冷たさとあたたかさの間に、
大人と子どもの間に、
あるものは何だろう。
この子たちはいつ、
ぼくを一日中追いかけ、
服を引っ張った大人たちに
変わるのだろう。
心に何かが引っかかり、
モヤモヤとしている。
それは確かなもので、
何だか大切なことのような気がして、
ぼくは夕暮れの帰り道を歩きながら、
ずっと考えていた。
水平線を照らす夕陽の光が揺れて、
まぶしいなって目を細めたとき
きらりとぼくの心に何かが光った。
はっとした、
「教育だ」
子どもたちがどんな人と出会い、
どんな時間を過ごし、どんなことを考え、何を表現するか。
その積み重ねのすべてが「教育」なんだ。
すっぽりとそれが
抜け落ちている気がした。
貧しさと閉塞感に押しつぶされそうになりながら必死に今日を生きている人々には。
この町には。
帰国したらもう一度、
「教育」を考えてみたいと思った。
あの日のインドの子どもたちが、
あたたかかったあの言葉が、
まぶしい夕焼けが、
心臓のよう、強く、
ぼくを突き動かしている。
今日も。
【働き方改革】
札幌市は「働き方改革」を強く打ち出している。
これまでの働き方を見直し、
必要性の感じないものはカットしていく。
定例の会議はなくなり、
電子掲示板とGoogleMeetで情報共有。
働き方改革によって
仕事がシンプルに研ぎ澄まされたことに
ぼくは大賛成だ。
しかし、
うーんと思うこともある。
必要のないことはやらない。
やったほうがいいこともやらない。
時間は限られているのだから、
私たちは「やらなければならないこと」だけをやろう。
しかし、
「やらなければならないこと」だけをやることが仕事ならば、人生ならば、それはなんて退屈だろう。
きっとそれは機械にもできることだ。
「やりたいこと」が大切だ。
ぼくはそう思う。
もちろん、
「やりたいこと」だけでは
生きてはいけない。
けれども、
書かなければならない線は書いた上で、
真っ白に広がる「余白」に
筆を走らせ、色鮮やかに描く。
曲がり、飛び散り、
のびのびと「あそぶ」。
そこに表現されるもの、
それは自分らしさだ、
崇高で透明に澄んだ
自分だけの人生だ。
必要のないことに血肉を注ぎ、
余白で遊ぶ、情熱的な非効率さこそが、
人間を人間たらしめる。
働き方改革によって
シンプルに見えるようになった余白を
ぼくは
「やりたいこと」でいっぱいにする。
人生で最も大切なことは
「やりたいこと」だから。
【デジタルとアナログ】
GIGAスクール構想のモデル校だ。
まだ誰もやったことがないことを
ガンガンやっていく。
新しい風をつくる
ぼくが最高に好きなことだ。
その実践が札幌市や日本中に広がっていく。
子どもたちは鉛筆で字を書くように
タイピングで言葉を綴る。
写真や動画を撮り、
CMやポスターをつくる。
クラスや学年の垣根を越え
それらを伝え合う。
「デジタル」な表現には
空を飛ぶようなスピード感、
自由さがある。
一方で、
ぼくは「アナログ」も大好きな人間だ。
手書きで書いた文字には温もりがある。
たった一人に向かって手渡すからこそ、
伝わることがある。
フィルムカメラで撮る写真や
レコード、カセットテープで聞く音楽は最高だ。
デジタルにもアナログにも
それぞれの良さがある。
だからこそ、
どちらでも自由に表現できるようになって欲しい。
デジタルだろうが
アナログだろうが、
表現するとき、伝えるときに、
大切なことは変わらない。
「そこに心があるか」
「そこに美しさがあるか」
伝えたいことが
一番に伝わる伝え方を選んで
のびのびと伝えて欲しい。
そんな子どもたちが大人になったら、
間違いなく未来は変わっていくだろう。
片手にmacbookを抱え、
もう片の手に筆を握って、
ぼくは愛を叫んでいる。
【夢】
徳島県の神山町に学校ができるという。
「神山まるごと高専」
コンセプト、かかげるビジョン、
ギンギンに尖った大人たちが本気で
夢を描いている。
それはそれは、
カッコよくって、ワクワクする。
子どもたちは豊かな自然の中で、
心ゆくまで学び浸るだろう。
自分の表現を武器に、
堂々と社会へ挑むだろう。
ぼくがやりたいこと、
やられてしまったなという感じ。
こんなにも壮大なスケールで、
尚且つ、クールに。
いつか北海道で、札幌で、
こんなプロジェクトができたら
いいなと切に思う。
もうすぐ札幌市の教員採用試験がある。
子どもたちと向き合えるならば
どんな立場でもいいと思っているので
全く結果にはこだわらないけれど、
ゆるやかに挑戦してみようと思う。
カフェをやりたいし、
フォトグラファーであり、
デザイナーでもありたい、
詩人であり、
ミュージシャンでもありたい。
相変わらずのぼくなので
どんなふうに生きていくかは
分からないけれど。
伝えたいことが
一番伝わる伝え方で
伝えていくだけ
たくさんの言葉を受け取ってくださり
有難うございました。
元気にやっているという報告でした。
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